開催報告(第148回)

細胞はどのようにして三途の川を越えるのか

講師:中務 邦雄 氏(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科・准教授 / 専門:代謝生化学、機能生物化学、細胞生物学)
日時 : 2019年11月15日(金)
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)

ヒトにとって老化や死は必ず受け入れないといけないものですが、もっと単純な単細胞生物の老化や死はどのようにしておこるのでしょうか。たとえば、食品の発酵や酒類の醸造に使われる酵母は、真核の単細胞生物で、培養液中で分裂を繰り返して増殖をしていきます。しかし、酵母の細胞分裂は無限におこるわけではなく、回数に制限があることが知られていて、これも寿命と考えることができます。細胞の死を理解するには、細胞がどのような仕組みで生きているのか、そして何が起こると死に向かうのかを知る必要があると考えられます。そこで今回のサイエンスカフェでは、最初に細胞周期、物質輸送、タンパク質の分解など、単細胞である酵母の研究によって明らかにされてきた「細胞が生きる仕組み」についてお話ししました。タンパク質の分解では、細胞の低酸素応答機構についても取り上げました。次に、酵母の寿命について、複製寿命と経時寿命を解説した後、単細胞生物のプログラム細胞死や制御された細胞死について触れました。これらは研究があまり進んでいない未開の分野で、死を判定する手法についても様々な議論が行われている状況です。そして最後に、ゾウリムシや藻類など、酵母以外の細胞の死についてもお話させていただきました。日が短くなり寒さも増してきたなか、多くの方にお越しくださいました。誠にありがとうございます。



中務 邦雄(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

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