開催報告(第149回)

適者生存:したたかな生物の生存戦略

講師:湯川 泰 氏(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科・教授 / 専門:植物分子生物学)
日時 : 2019年12月13日(金)
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)

地球上には数百万種の多様な生物が棲息し、生存をかけ競争しています。それらは時に協力し、ときに騙し合い、あるものは漁夫の利を得ます。そして、適応できないものは自然界から消えていきます。つまり、現存する生物は適応の成功者であり、そしてこれからも変化し続けます。つまり、生物はそれぞれがとても巧妙な生存戦略を持っているのです。例えば、テントウムシはどこから光が当たっても影の面積が最小となる形をしています。この形のおかげで、捕食者から見つけられづらくなります。さらに、体内に毒を貯め、自分は危ないヤツであることをアピールするために派手な色合い(警告色)をしています。つまりテントウムシは適者生存の勝者なのです。

すると、テントウムシにあやかろうとちゃっかり真似をするヤツが現れます。擬態と呼ばれる生存戦略の一つで、全く異なる種類の昆虫がテントウムシそっくりの色・形になります。毒と溜め込む生物も多く、これも有効な生存戦略です。フグ毒(テトロドトキシン)やシガテラ毒は、実は微生物が作る毒素をお魚が溜め込んだものです。

また、植物は病原菌との間で、生き残りをかけて壮絶な騙し合いを繰り広げてきました。しかし、敵対しているうちに仲良くなってしまう場合もあって、これも生物の特徴です。例えば、マメ科植物の根に寄生する根粒菌は、植物にとってもなくてはならない存在です。実に、生物の世界は奥が深いと言えます。

また、講演後にはたくさんのご質問をいただきました。単細胞から多細胞に変わるきっかけは何かとか、細胞同士はお互いを認識しているのかとか、なかなか鋭い質問が飛んできて、知っている限りの返答をさせていただきました。夜の長い時期に、参加者の皆さんとじっくり生物の特徴について考えることができました。



湯川 泰(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)

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