藤本_2 of 非コードDNA

全ゲノムシークエンスによる肝癌関連新規機能性非コード領域の探索と機能解析
藤本明洋  (連携研究者:古田繭子、中川英刀)

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理化学研究所 統合生命医科学研究センター


がんは、発がん過程において多数のゲノム突然変異を蓄積することが知られており、遺伝子変異の解析より多数の癌関連遺伝子が発見されてきた。最近のシークエンス技術の著しい発展を背景として、ゲノムの網羅的変異解析が盛んに行われ、新規癌遺伝子が次々に報告されている。しかしながら、がんゲノムのシークエンス解析では、コストの高さや、特に非コード領域のマッピングの困難さから、遺伝子領域に着目したエクソーム解析が主流となっており、非コード領域の知見は未だ充分ではない。
 我々は、先行研究として日本人の全ゲノムシークエンスを行い、データ解析パイプラインを構築した。また、肝癌27症例の全ゲノムシークエンスを解析し、肝癌に特徴的な塩基置換パターンがあることや、エピゲノム全体に影響を及ぼす事が推測されるクロマチン制御に関わる因子のゲノム異常、さらにはテロメア伸長に関わるTERT遺伝子にHBVゲノムが組み込まれていることを明らかにしてきた。一方で、症例間で変異している遺伝子の頻度は低く、遺伝子領域以外の変異も発がん過程に重要であることが示唆された。そこで、非コード領域の変異の分布を解析した結果、変異が集積したプロモーターやlincRNA領域が存在していた。これらの結果は、非コード領域の変異の重要性を示唆している。しかし、少数のサンプルの解析では、無数の変異の中から機能的意義のある変異を選出することは困難であった。
 本研究課題では、我々が推進してきた約300症例の肝癌の全ゲノムシークエンスデータを用いて、肝癌で高頻度に変異の蓄積しているゲノム領域を解析し、ヒトゲノムに存在しているがん関連の機能性非コード領域の同定と機能の解明を行う。