深尾_2 of 非コードDNA

ヒトゲノムにおけるAlu配列の遺伝性疾患,遺伝的多様性に与える影響に関する研究
深尾 敏幸

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岐阜大学 大学院医学系研究科 小児病態学
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岐阜大学附属病院で小児科の患者さんを診療しておりますが、遺伝性疾患もとにあるゲノム情報には常に興味を持っております.専門領域は小児科の中でも先天代謝異常症、臨床遺伝、アレルギー、免疫異常などです.
 Alu配列はヒトゲノム中の100万コピー以上もあるとされ,全ゲノムの約10%を占めます。Alu 配列は霊長類の進化とともに出現し、これまで意味のない配列と思われてきましたが,最近ではいくつかの機能的重要性が指摘されてきています.①ゲノム領域への挿入による遺伝子の不活化 ②組み換えによるDNA断片の重複,欠失誘導(ヒトの遺伝子変異の数%を占めます)③近傍の遺伝子への調節因子の供給 ④転写後のレベルでの遺伝子発現への影響としてalternative splicing、RNA editing, 蛋白転写への効果 などですが、実際報告例としては少なく,報告の積み重ねが必要であります.上記のうち特に②④に注目して研究しています.②については、エクソンのコピー数を決定できるMLPA法により複数の先天代謝異常症責任遺伝子のMLPA法を確立し、実際にT2欠損症とHMGCL欠損症で、Alu配列が関係する欠失、重複を同定しています.Alu配列のなかのどの領域が組換え点として用いられる傾向があるのかについて解析していきたいと考えています.また④については、Alu配列が近傍エクソンの認識に影響するのではないかという仮説をたてて,T2遺伝子においてsuboptimalなsplice acceptor部位の上流にAlu配列が挿入されると,下流のエクソンのスキップを誘導する事を実験的に明らかにしてきました.さらにmini-gene splicing experimentsを用いて解析をすすめ,どのような条件のときにAlu配列はスプライシングに影響するのか?そのような条件にあうAlu配列は実際ヒトゲノムでどの程度あって,実際にAlu配列がalternative splicingにどのように影響を与えているのかについてもバイオインフォーマティクスの面から解析したいと考えています.