菱田 of 非コードDNA

非コードDNA 領域が果たすDNA 損傷ストレス耐性機能
菱田 卓

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学習院大学 理学部生命科学科
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細胞内では、地球環境及び細胞内環境に由来する様々な因子によってDNA損傷がランダムな箇所で発生しています。生物は、このような微量ながらも慢性的なDNA損傷を受け続ける環境において、ゲノムの安定性を維持しながら増殖する能力、すなわちDNA損傷ストレスに対する耐性を獲得することで様々な環境に適応してきました。これらのDNA損傷の多くは、時間あたりの量としては微量である一方で、この微量ながらも長期に渡る損傷ストレスへの暴露は突然変異を誘発する原因となりうるため、ヒトにおける発がんや老化と密接に関連していることが明らかとなってきています。また、このような慢性的な損傷ストレス環境下では、DNA損傷の修復に加えて、複製阻害の回避や細胞周期の制御機構などが一つのシステムとして機能し、DNA損傷の量や発生する場所によって柔軟にそれら役割を変動することで損傷ストレスに対する耐性獲得に重要な役割を果たしていると考えられます。従来のゲノム安定性に関する多くの研究は、遺伝子コード領域の変異に起因する影響に関するものであり、反復配列などを含む非コードDNA領域におけるDNA損傷が、ゲノム安定性維持や細胞の増殖にどのような影響を及ぼすかについては不明な点が多く残っています。本研究では、慢性的なDNA損傷ストレス環境において、DNA損傷応答やDNA損傷による複製阻害回避機構が非コード領域特異的な反復配列やクロマチン動態によってどのような影響又は制御を受けているのかを解明します。さらに、非コード領域安定性の破綻が染色体構造や様々な細胞機能の制御に及ぼす影響を明らかにすることで、非コードDNA領域が損傷ストレス耐性獲得に果たす役割とその分子基盤の解明を目指しています。