印南 of 非コードDNA

集団遺伝学理論と比較ゲノムによる非コードDNA 領域の進化メカニズム
印南 秀樹

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総合研究大学院大学 先導科学研究科
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我々の研究室は、ゲノムの進化のメカニズムを分子レベルで解明することをゴールとしています。これまで分子進化遺伝学の研究の主な対象は、タンパク質をコードする遺伝子でした。今回、それ以外の重要な機能情報をもつ非コード領域を研究対象に設定し、新しい概念のゲノムの進化を考えます。

ダーウィンが言うように、目に見えるような大きな進化は一朝一夕になし得るものではなく、小さな進化の積み重ねです。これは、タンパク質をコードする遺伝子だけでなく、それ以外の重要な機能情報をもつ染色体上のすべての非コード領域にも当てはまります。あらゆるレベルの突然変異(塩基置換から、領域の重複欠失、染色体の構造変化まで)は種の進化に貢献することができます。ここに自然選択という力が加わり、その突然変異がふるいにかけられます。そして、種全体に固定したものだけが、進化に貢献できるのです。そして、このようなミクロレベルの進化プロセスが無数に蓄積し、それが例えばヒトとマウスの染色体を比べたときに可視化されるマクロレベルの進化につながります。本研究では、非コードDNA領域がどのような過程で進化してきたかを明らかにします。理論研究は一般的に非常に柔軟で、幅広いタイプの非コードDNA領域を研究対象にすることができます。例えば、反復配列、トランスポゾン増幅を介したクロマチン構造形成に関する進化的モデリングなどを中心に、広い興味をもって研究を遂行します。それぞれのトピックに対し、以下のようなプロセスで本研究を行います。

1)集団遺伝学的アプローチによる染色体研究:集団遺伝学の理論を染色体レベルにまで広げ、それを比較ゲノムのテクニックに組み込むことによって新しい理論を構築する。近縁種のゲノム情報比較を前提に、基礎理論フレームワークを構築し、さらにはデータ解析ツールの開発を行う。
2)多次元ゲノム情報解析ツールによる非コードDNA領域の機能の解読:開発した解析ツールを、多次元のゲノム情報(塩基配列から発現まで)に応用することによって、非コード領域のどの部分にどのような自然選択の力が加わっているかを解明する。それは、非コード領域の特に重要な部分や、ある種に特異的に適応進化した部分を特定することも可能にする。

このような理論的研究と、本領域の実験研究を融合することによって、非コード領域の機能の理解が飛躍的に発展するはずです。