石黒 of 非コードDNA

減数分裂特異的コヒーシン複合体による相同染色体の構造変換と対合に関する解析
石黒 啓一郎

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東京大学 分子細胞生物学研究所
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減数分裂期では相同染色体どうしの対合と組換えによる二価染色体の形成を経て、体細胞期には見られない染色体構造の劇的な変化が生じている。とりわけAxial Element(AE) と呼ばれる減数分裂に特有の染色体軸構造がコヒーシン複合体によって構築されることが示唆されている。本研究は生殖細胞における減数分裂特異的コヒーシン複合体の役割をAE構造の形成と相同染色体のペアリングの観点から探ることを目的とする。最近我々は減数分裂特異的な新規コヒーシンサブユニットRAD21L型コヒーシンを同定し、REC8型コヒーシン複合体とは相互排他的局在パターンを示すことを明らかにした。さらに、この両コヒーシンの相互排他的局在パターンがバーコードの様に作用して正しい相同染色体のペアリングを促進するというcohesin code仮説を提唱した。高等動物のように反復配列を多く持つゲノム上での相同染色体のペアリングを考えた場合、non-allelicな組換えのリスクを避けるためにもDNA配列レベルでのホモロジーサーチとは別のレベルでの制御が想定される。そこで本研究ではコヒーシン複合体が相同染色体の初期ペアリング過程において相同組換えの機構とは独立に積極的な関与を果たしている可能性について検討を行う。さらにRAD21L及びREC8コヒーシン複合体のゲノム上での局在を規定するDNA配列の同定を行い、非コードDNA領域が相同染色体のペアリングに寄与している可能性について検討する。本研究の目論みが成功した場合には、減数分裂特異的コヒーシン複合体と非コードDNA領域との関連に新たな展開をもたらすものと期待される。