大串 of 非コードDNA

卵母細胞核小体によるヘテロクロマチン確立機構の解明
大串 素雅子 

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京都大学 白眉センター
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ヒトの体は約200種類の60兆個にもなる細胞から構成されている。個々の細胞内には様々な細胞小器官,構造体が存在し,生命活動の維持に必須の役割を担っている。核小体は細胞核に存在する明瞭な球状構造体であり,タンパク質合成を担うリボソームを構築する場として主に知られている。しかし,哺乳類卵母細胞では転写が完全に抑制されており,核に明瞭な核小体構造が存在するもののその内部にリボソームRNA遺伝子が存在しない。そのため,この核小体はリボソーム合成に関わっていないと考えられ,長年その機能は不明であった。我々は顕微操作により核小体を取り除く技術を開発し,卵母細胞核小体が初期胚発生進行に必須であることを明らかにした。また核小体を除いた受精卵はタンパク質合成を正常に行うことからリボソーム合成以外の核小体の機能が示唆された。最近,核小体を除いた受精卵の核ではヘテロクロマチンの高次構造に異常が観察され,その後の第一分割で染色体の末端部のヘテロクロマチン構築に異常が生じることを発見した。マウスの染色体の末端部にはセントロメア,リボソームRNA遺伝子(rDNA)リピート領域,テロメアという非コードDNA領域が密集している。核小体の因子もしくは構造が非コードDNA領域のヘテロクロマチン構築を制御することでゲノムの安定な伝播,染色体の構造維持に関与している可能性があると考えている。本研究では卵母細胞核小体に存在する核小体RNAをRNA-seq法によって同定し,それらの候補の中からセントロメア,rDNAリピート領域,テロメアといった非コードDNA領域のヘテロクロマチン構築制御に関与するものを同定することを目的としている。