高田 of 非コードDNA

複製フォークの安定化機構とその破綻による病態の解析
高田 穣

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京都大学放射線生物研究センター 晩発効果研究部門
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染色体は、内因性代謝産物、放射線、菱田班が使用する低線量紫外線、オンコジーン活性化、抗がん剤や複製阻害剤投与などによりDNA損傷や複製ストレスを受ける。これらをまとめて本研究では「染色体ストレス」とよぶ。高等真核細胞染色体の非コードDNA領域には、“染色体ストレス”高感受性領域のいわゆる「脆弱部位」が進化上保存されており、生命維持に必須な何らかの役割を果たしている。
ヒト染色体には、common fragile site(CFS)と呼ばれる脆弱部位が数十カ所以上同定され、FRA3B(3番染色体)、FRA16D(16番染色体)などが代表的である。また複製と転写装置の衝突部位やテロメア、セントロメア、インターメア(非コード機能配列)、複製開始点、G-quadruplex(G4)なども、ストレスを受けやすい高感受性部位であると予想される。
染色体ストレス時、これらの部位で進行を止められた複製フォークは修復のネットワーク(チェックポイント、ファンコニ貧血経路、DNA組換え修復など)により維持されているが、それらが破綻すると発がん、幹細胞不全、早期老化などの病態が出現する。
本研究では、(1) 非コードDNA上で展開される染色体ストレスの応答因子と各脆弱部位の位置関係を詳細に検討し、ゲノム配列の面から染色体ストレス応答の実体を探る。さらに、(2) ATRキナーゼによるチェックポイントをはじめとした分子機構の初期活性化メカニズムと、(3)それによって発動するチェックポイントやファンコニ貧血経路などのエフェクター機構の解明を目指す。また、(4)「病態解析チーム」として領域の基礎的な知見を老化やがんなどのヒト疾患理解へと展開したい。