谷内_2 of 非コードDNA

イントロン構造を介した遺伝子発現特異性の制御
谷内 一郎

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理化学研究所 統合生命医科学研究センター 免疫転写制御研究グループ
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多細胞生物の発生・分化過程において、特定の遺伝子群を時・空間特異的に厳密に発現制御することは必須である。このような遺伝子発現の特異性を規定する機構として、制御領域と呼ばれる非コードDNA領域に内在される特異的なDNA配列が特異な核タンパクに認識される機構を介した制御機構については多くの知見が蓄積して来た。高等生物ではタンパク質の多様性を産み出す機構としてRNAスプライシングが知られている。RNAスプライシングは一方で外来性遺伝子の発現を増強することが観察されて来たが、RNAスプライシングに関連するイントロン構造が遺伝子発現の特異性の制御に関与する例はこれまで報告がない
 ヒトの健康の維持に必須である免疫システムの重要な要素であるTリンパ球は胸腺で分化するが、この際に補助分子であるCD8の動的な発現が重要な役割を果たすことが知られている。特にCd8遺伝子の分化段階かつキラー系列特異的な再活性化がT細胞分化制御に重要であるが、その分子制御機構は未だ良く解っていない。私は遺伝子標的法にてCd8遺伝子座の構造を改変する試みから、RNAスプライシングを可能にするイントロン構図の存在がCd8遺伝子の再活性化に必要であることを示す結果を得た。本研究課題では、イントロン構造がどのようにして遺伝子発現の特異性の制御に関与するかに焦点を当てて解析し、これまでに知られていない新規の階層での遺伝子発現制御機構を解明することを目指します。