研究内容



◇ 卵母細胞の成熟分裂(減数分裂)過程の細胞生物学的研究

卵母細胞(一次卵母細胞)は、染色体を複製し減数分裂の前期に入ったところで 一時停止し、リボソームや卵黄や表層粒等の受精後に必要な物質を蓄え始めます。 そして数ヶ月から数年かけて成長し、十分な栄養を蓄えた段階では 元の体積の数千?数万倍の体積を持つ大きな細胞となります。 このあと外界からのシグナルが伝わると減数分裂を再開し引き続く2回の分裂を経て 半数(n)の染色体を持つ成熟卵細胞となります。
 卵母細胞内では減数分裂の再開に伴って、まず (1) 卵核胞(一次卵母細胞の巨大な核) の動物極への移動 が起き、ひきつづいて (2) 減数分裂前星状体の発達  (3) 卵核胞の崩壊 (4) 分裂装置の形成 (5)分裂装置の回転と移動  (6) 第1分裂の終了と第1極体の形成 (7) 第2分裂の終了と第2極体の形成が起きます。 またこの間に、(8) 細胞質内の各種の構造の移動と再配置も起きます。
 これらの過程を、光学顕微鏡(通常透過型顕微鏡、ノマルスキー顕微鏡、蛍光顕微鏡)、 電子顕微鏡(SEM走査型、TEM透過型)を用いて研究しています。また、各種阻害剤 および特異抗体による関連分子の解析をおこなっています。
イトマキヒトデ減数第2分裂後期

◇ 細胞分裂の機構の研究:微小管系およびアクチン系の動態

 受精卵は直ちに細胞分裂を始めて多細胞化し、形態形成と細胞分化を経て複雑な個体へと 発生してゆきます。細胞分裂自体は酵母から哺乳類に至るまで 基本的に共通する点の多いことがわかっています。 しかし細胞学的な研究をするのには受精卵はすぐれた材料です。
 ごく初期の発生過程での細胞分裂(卵割)は、分裂後の成長の時期を伴わないのが特徴で、 多くの動物では卵に備わった分裂リズムに従って同調的に分裂を繰り返します。 また、卵および初期胚の細胞は体細胞に比べてずっと大きくて見易い事もあります。 海産無脊椎動物の場合には培養が簡単である事も有利な点でしょう。
 当研究室では、初期胚の分裂過程における微小管系およびアクチン系の分布と機能に 注目して研究もおこなっています。
MFH細胞(培養ガン細胞の一種)のアクチン線維