第35回
サイエンスカフェ in 名古屋

2009年7月24日(金) 午後6〜8時

実験・体験!
液晶TVを融かす

話題提供者 : 片山 詔久 氏

名古屋市立大学大学院 システム自然科学研究科

(専門:分子分光学)


■ 開催報告
会場
 「液晶ディスプレイ」でよく知られている「液晶」とは、いったいどんなものなのか。
 第35回サイエンスカフェ in 名古屋は、「実験・体験!液晶TVを融かす」というタイトルで、簡単にできるが学校や自宅ではあまりやらない(やれない)実験を交えて、身近になった「液晶」の科学に関して片山先生から話題が提供されました。会場は、7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階) でした。

カップ  受付を済ませると、カップを渡されて用意してある茶色い「絵の具」で絵を描いてくださいとのことで、一体これで何をするのか、始まる前からワクワクドキドキです。

会場全体  まず参加者が持っている「液晶」に対するイメージについての質問から話が始まりました。あとで示された先生のイメージは会場のそれとはかなり違っており、どんな話になるのか期待がわいてきました。

とかす  今日の話題のメニューにつづいて、理科の復習として、中学校などで習った「固体」「液体」「気体」の説明があり、「液晶」という言葉は、これらと同じように状態を表すものであると解説されました。その後、液晶テレビの中にどのくらいの量の液晶物質が使われているかというクイズが出され、さらに、小瓶に入った液晶物質を温めたりして観察しました。そして、温度で状態が変化するなら...ということで、液晶ディスプレイを温めたら、「液体テレビ」になって壊れてしまいました。でも、冷えてくると「液晶テレビ」に戻り、 これが今回の講演タイトルの「液晶テレビを融かす」ということだとわかりました。

偏光板  次に、液晶表示パネルの構造や原理について説明があり、構成部品についていろいろな実験をしました。たとえば、ガラスの表面に透明電極があると電気が流れることを演示実験で確認したり、偏光板を使って光がどのようになるかを渡された2枚の偏光板を使って自分たちで実験をしながら、光の不思議な現象を体験しました。


ラビング  つづいて、PVAという薬品がガラスに塗ってあるものを擦る「ラビング」という工程をまねた実験をやってみました。これは、液晶パネル作成のなかでローテク部分といわれている工程だそうですが、製品となる大きなガラス板(マザーガラスと言うそうです)でもこのような作業が行われていることに驚きです。自分で作った液晶TV「もどき」が光を通すことを確認したときには何か感動しましたが、この方法では均一なものはなかなか上手にはできないようです。

 ここで、休憩がてらに質問コーナーと、受付のときに書いたカップの絵の話があり、カップを温めると絵がカラフルに浮かび上がってきて、みんなでちょっとした歓声をあげました。

温度計  最後に、ディスプレイ以外の液晶の応用例をいくつか挙げられ、愛地球博でのモリゾーゴンドラで使われた調光ガラスや液晶温度計などの話を実物を見ながら紹介がありました。「液晶」が思いもしない様々なところで活用されていたり研究開発が考えられているとのことで、液晶テレビのことしか知らなかった私にとってはとても新鮮に感じました。とくに、私たち生物の細胞膜などが液晶とたいへん関係が深いというのは驚きでした。

 2時間のあいだにいろいろな話題が出てきて、「液晶」の奥深さを感じると同時に頭の中が一杯になりましたが、手軽な実験も多くてとても楽しくあっという間に時間が過ぎてしまいました。途中で参加者からのいろいろな質問がでたり相当踏み込んだ発言があったりして、講演会や授業とは違った雰囲気を味わいました。



Last Updated on Jan. 12, 2010

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