研究内容

分子の集団のふるまいを理論的に研究しています。一言で言うと物性理論です。研究では,古典力学,量子力学,統計力学を主に使います。これまで,固体中での分子間力の開発を中心に,固体中での分子運動に関する基礎的な研究をしてきました。
私の研究上の興味は,物理現象よりも,そこにひそむ数式ないしは数学の面白さを見つけることにありました。用紙何枚も使って書いていた式がある日突然一行の式になってしまうことを見出したときの快感は何にも換えがたいものです。自然は何と美しいものかと感嘆する瞬間です。研究の途中は実に苦しいことの連続ですが,この快感を味わいたいために,次の苦しい作業に取り掛かるのです。ところで,発見の恍惚感の後に次のような不安に襲われます。この式は世界中の誰もまだ知らない。しかし,もしかすると,世界のどこかでこの式を見つけようとしている者がいるかもしれない。早く公表しなければ。
物性の理論研究において,数値を求める上で,コンピューターの使用は重要でかつ避けることはできません。しかし,計算機に頼るあまり,荒削りの表現のまま発表されてしまう仕事が多く見受けられます。確かにこの方が多くの論文を公表できますし,業績主義の現代の風潮に合っています。この点では,私は損な性格のようです。