コンドリュール

図:Allende 隕石の断面図(長嶋剣博士より頂いたもの)。丸く見える 1 mm 程度のサイズの組織が「コンドリュール」である。

地球に落下してくる隕石のほとんどは,「石質隕石」と呼ばれる,見た感じは地球上の石と変わりない物質から成っています。見た目で大きく異なるのが,石質隕石に含まれる,「コンドリュール」と呼ばれる組織の存在です。

コンドリュールは,直径 1 mm 程度の球状の粒です。主に,カンラン石や輝石といった,地球上の岩石にふんだんに含まれている鉱物からなっています。その形がほぼ球状であることから,一度マグマのように溶けて,表面張力で丸くなったのち,急冷凝固したものだと考えられています。また,凝固時に含まれていた単寿命放射性核種が崩壊して生じた娘核種の量を調べることで,凝固が生じたのが 45.6 億年ほども昔であることが分かっています。

コンドリュールを融かすには,岩石をマグマにするのと同様,約 2000 K という高温状態まで加熱する必要があります。45.6 億年昔の初期太陽系において,コンドリュールを溶融させ得る加熱現象は何だったのか ? 1877 年に Nature 誌に発表された H. C. Sorby 博士の論文 “On the structure and origin of meteorites” 以来,130 年以上もの長い間解決されていない問題なのです。

本研究室の取り組み

コンドリュール形成に関連した物理現象の理論的研究に取り組んでいます。コンドリュールを溶融させた加熱メカニズムとは? 溶融したコンドリュール内部で鉱物結晶はどのように成長したのか? これらの問いに対して,宇宙物理学的および結晶成長学的アプローチで迫ります。

  • 衝撃波加熱シナリオに基づいたコンドリュール熱史の理論計算(H. Miura, T. Nakamoto, and H. Susa, 2002, Icarus 160, 258-270; H. Miura and T. Nakamoto, 2005, Icarus 175, 289-304; H. Miura and T. Nakamoto, 2006, Astrophys. J. 651, 1272-1295)
  • 高速ガス流中で溶融したコンドリュールメルトの流体力学的挙動(T. Kato, T. Nakamoto, and H. Miura, 2006, Meteorit. Planet. Sci. 41, 49-65; H. Miura and T. Nakamoto,  2006, Icarus 188, 246-265; H. Miura, T. Nakamoto, and M. Doi, 2008, Icarus 197, 269-281)
  • 複合コンドリュール形成メカニズムの提案(H. Miura, S. Yasuda, and T. Nakamoto, 2008, Icarus 194, 811-821; S. Yasuda, H. Miura, and T. Nakamoto, 2009, Icarus 204, 303-315)
  • 急冷コンドリュールメルト内部における鉱物結晶の成長過程の理論的研究(H. Miura, E. Yokoyama, K. Nagashima, K. Tsukamoto, and A. Srivastava, 2010, J. Appl. Phys. 108, 114912; H. Miura, E. Yokoyama, K. Nagashima, K. Tsukamoto, and A. Srivastava, 2011, Earth, Planets and Space 63, 1087-1096; H. Miura and T. Yamamoto, 2014, Astron. J. 147, 54 (9pp))