画像内容に適応した最適シャープニング


 この研究は、以前に行なわれた「線特徴による自然物と人工物の識別」の研 究(以降“関連研究”とします)と関連しています。まず、そちらを読んで頂 いた方が分かりやすいかもしれません。
 カメラやスキャナで撮影した原画像は通常ボケがあります。そのため、これ を表示したり印刷したりする場合、シャープニング(鮮鋭化)と呼ばれる処理 を行なうのが普通です。これは、画像中の物体のエッジを強調するような処理 です。
 この強調量の最適値は画像内容により異なると言われています。一般的には 「機械ものは強く、肌ものは弱く」などと言われますが、この“機械もの”を “人工物”、“肌もの”を“自然物”と置き換えてもほぼ当たっているようで す。その例は、関連研究のページに示されています。関連研究では、画像に写 っている対象を“人工物”と“自然物”にほぼ90%の識別率で分類することが できました。その識別結果により強調量を変化させればいいことになります。
 しかしこの方法は、画像全体のエッジ強調量を調節することになるので、画 像全体が人工物か自然物のどちらかしか含んでいない場合には適用できますが、 1枚の画像に両者を含んでいる画像には適用できません。

画像領域と線特徴

 関連研究では、自然物と人工物の識別に直線特徴を利用しました。画像から 直線を抽出してその長さを評価し、「長い直線の割合が高い画像は人工物の画 像である」として識別を行ないました。これは、図1の自然物と人工物が混合 した画像を見ても理解できると思います。この画像からラインを抽出した画像 が図2ですが、中央に写っている構造物(温室)の部分には長い直線が多く見 られます。しかし、その周辺の木々の部分では、短い直線が多くなっています。
 更に、図2から長い直線(長さ20画素以上)のみをとりだしたのが図3です。 ほぼ構造物の部分のみに存在していることが分かります。
fig.1 fig.2
                   図1                                     図2 fig.3 fig4
                   図3                                    図4

領域に適応した鮮鋭化

 自然物と人工物の両者を含む画像に対応して最適な鮮鋭化を行なうため、次 のようなアルゴリズムを開発しました。
  1. 長い直線の近傍を人工物領域として強く鮮鋭化する。
  2. しかし、短い直線の近傍でもある場合は弱く鮮鋭化する。
  3. その他の領域は弱く鮮鋭化する。
 以上のアルゴリズムの結果を図4に示します。単純な手法ですが、建造物の部 分と木などの部分にそれぞれ適度な鮮鋭化がかけられて、画質の高い画像となっ ていることが分かります。