画像からの光源色度の推定


 画像1枚から、その画像を撮影した光源の色度を求めることができると、
・ホワイト・バランス
・カラー・コンスタンシー(色恒常性)の実現により、本来の色を復元する ことにより、対象を色で同定することが可能になります。
 従来ホワイト・バランスを実現する技術として、
@画像中の最も明るい色を‘白’とする。
A画像中でR,G,Bのそれぞれの最大値を求め、その(R,G,B)の色を‘白’とする。
B画像全体の色を平均するとグレイとなると仮定し、‘グレイ’の色度を求め る。
のような経験的な手法が利用されていました。
 また、最近は画像全体の色の分布を調べ、その分布を特徴量として分類する ような手法も用いられています。

二色性反射モデル

 本研究では、光源色を求めるために、‘二色性反射モデル’を利用しました。 二色性反射モデルとは次のようなモデルで、現実のほとんどの物体の表面反射 を近似できます。
‘赤いプラスチックのボール’の表面の色(R,G,B)は、次の式に従います。 ここでO≡(Ro,Go,Bo)t は拡散反射成分であり、(赤い)物体色を、W≡(Rw,G w,Bw)tは、鏡面反射成分であり、光源色を示し ます。すると、(R,G,B)はRGB色空間中で、図1のように、OW の張る平面上に分布します。
 では、画像中に‘赤いボール’だけでなく、‘緑のボール’もあったらどう でしょうか。図2のように、赤いボール上の色はO1W の張る平面上に、緑のボール上の色はO2Wの 張る平面上に分布します。二つの平面について、光源色のベクトルは共通です。 ですから、画像から赤と緑のボールの色領域を別々に切り出し、色空間中で二 つの平面を求めその交線を求めれば、光源色ベクトルを求めることができます。
fig.1 fig.2
        図1                      図2

 この原理は以前から知られていましたが、画像からそれぞれの色領域を正確 に切り出すことは、コンピュータビジョンの究極の問題であり、困難です。 また、分布平面を正確に求めるには、画像中の切り出された色領域が物体色か ら光源色まで広い色分布を含んでいないと難しいと思われ、実用されませんで した。

二次元モデル

 しかし、二色性反射モデルは、色度平面上で考えることもできます。すると、 ある色領域上の画素の色度は、図3のように光源色度に向かう直線上に分布し ます。画像にノイズがあったり、色領域の切り出しが不完全であると、これら の直線は必ずしも正しい方向を向きません。しかし、画像中に多くの色領域が あれば、切り出しが不完全であっても、多くの分布直線までの距離が最小とな る色度をロバストに求めることができるのではないかと考えました。
fig.3
                   図3

限定色表現

 画像から色領域を切り出す代わりに、画像を色が近い部分に分割します。図 4は、色空間を色分布に従って分割する様子を模式的に示したものです。
fig.4
                図4

実験結果

 図5のカラー画像例では、色差僞ab=10以下を‘近い色’とした とき、図6のように54色で表現されました。玩具のトランペットのベルの赤い 領域がその明るさによって3〜4色に分割されているのが分かります。この分 割された色領域毎に色度分布直線を求め、それから光源色度を推定した結果が 図7になります。図7では、色度分布直線が白線で、推定された光源色度が赤 い十字で示されています。光源の正しい色度と比較したところ、色度(x,y)の 値で小数点以下2桁程度の精度が得られることが分かりました。
fig.5 fig.6
                図5                                  図6
fig.7
                図7