線特徴による自然物と人工物の識別
画像をその中に写っている対象によって分類することは、色々な場面で役に
立ちます。すぐに思いつくのは、画像を検索する応用ですが、ここでは特に
画像の高画質化への応用を主対象としています。
デジタルカメラ等で撮影した画像を利用する場合、そのままの形で利用する
ことは少なく、通常、レタッチと呼ばれる“好ましい見えの画像にする”処理
が行なわれます。その中にシャープニングと呼ばれる鮮鋭度を高める処理があ
ります。
このシャープニングの最適な強度が、画像の内容、特に自然物画像と人工物
画像で異なると言われています。具体的には、人工物にはかなり強く掛けた方が
よいが、自然物には余り強く掛けると不自然な画像になります。図1の人工物
画像は図2にようにシャープニングした方が好ましく見えるのに、図3の自然物
画像は図4のように同じ強度でシャープニングすると不自然に見えます。です
から、このシャープニングの強度を自動的に調節するには、画像の内容が自然物
か人工物かを識別する必要があります。
(実際にそのように感じるかは、このページを見ているコンピュータディスプレイ
の設定やサイズによりますので保証はできません。実際の実験は、印刷物で
解像度やサイズを固定して行ないます。)
図1
図2
図3
図4
画像を記述する3種の線特徴
画像の鮮鋭化は、画像の線状のエッジ部分を強調することにより行なわれます
ので、画像の線特徴で自然物と人工物の識別ができるとの仮定の下に、まず
直線の抽出を行ないました。図1の画像から抽出された直線が図5、図3の画像
から抽出された直線が図6になります。
図5
図6
これを見ると、
- 人工物では長いエッジが多いが、自然物では短いエッジばかりである。
- 人工物のエッジは、縦と横のように向きが揃っている。
- 自然物のエッジは、画像全体に満遍なく存在するが、人工物の場合はそうで
はない。
のような特徴があることが分かります。そこで、次のような3種類の線特徴を
画像処理により抽出し、実験しました。
- 抽出された直線の内の、長いものの比率(X)
- 抽出された直線方向のばらつき(Y)
- 抽出されたエッジが画像全体を覆っている程度(Z)
実験結果
識別実験結果(識別率(%))
| X | Y | Z |
fXY | fXZ |
fYZ | fXYZ |
Set 1 | 90 | 82 | 83 |
87 | 90 | 89 | 91 |
Set 2 | 92 | 89 | 80 |
91 | 90 | 87 | 91 |
Set 3 | 88 | 83 | 79 |
86 | 90 | 84 | 85 |
Average | 90 | 84.7 | 80.7 |
88 | 90 | 86.7 | 88.7 |
上の表は、それぞれの特徴による識別率を示しています。fXY
などは、特徴XとYの組み合わせの特徴を示しています。この実験の
結果、特徴Xが、他のものに比較して断然強力で、単独で90%以上の識別力を
持つことが分かりました。また、この直線特徴は、従来知られていた特徴と比較して
も格段に強力であることも分かりました。