量子コンピュータの利点は、従来のコンピュータ(古典コンピュータ)に比べて計算が「劇的に」速くなると期待されるところです。ところがこれはその実装の他に、アルゴリズムに依ります。アルゴリズムが悪ければ、古典コンピュータと変わらないか悪くなるので、実現しようとする意欲が湧きません。量子コンピュータが古典コンピュータより速くなるアルゴリズムで現在知られているのは、因数分解(Shor)と検索(Grover)です。
量子コンピュータを実現する系にはいろいろな候補がありますが、実現したのは今のところ一つ(分子のNMRを用いた15の因数分解)しかありません。
量子通信は量子光学の分野でさかんに実験が行われており、「量子テレポーテーション」と呼ばれる現象が実現しています。テレポーテーションといってもSFみたいな物質の瞬間移動ではなく、情報(量子力学的状態)の移動です。
この新しい分野を勉強してみたいという方は、一度ご連絡下さい。
必要な知識:大学理工系1年の線形代数・微積分、量子力学の原理(量子力学的状態・重ね合わせの原理・コペンハーゲン解釈等)やユニタリ変換など、電磁気学
3次元空間では、すべての素粒子はボソン(ボース粒子)かフェルミオン(フェルミ粒子)に分けられます。核子や電子、ニュートリノなどはフェルミオンで、光子はボソンです。
ボソンは1つの状態にいくつもの粒子が入れ、フェルミオンは1つの状態に最大1つの粒子しか入れません(パウリの排他律)。低温になると両者の違いが顕著となり、ボソンの場合はある温度以下ではエネルギー最低の状態に多くのボソンが入り始めます。これをボース・アインシュタイン凝縮といいます。4Heの超流動現象は、ボース・アインシュタイン凝縮の発現と理解されています。
また、フェルミオンが偶数個集まればボソン的な振る舞いをするので、偶数個のフェルミオンからなるボソン(composite boson)もボース・アインシュタイン凝縮を起こします。超伝導状態は、電子がフォノンを介してゆるい対をつくりボース凝縮した状態と理解されています。
超伝導と超流動はある意味で、フェルミオン間の引力が弱い極限と強い極限に当たります。 電子が弱い引力相互作用をしてゆるい対をつくりボース凝縮した状態が超伝導、陽子2個、中性子2個、電子4個が強い引力で4He原子(hard coreボソン)をつくってボース・アインシュタイン凝縮した場合が超流動状態です。
私が大学院生の頃、高温超伝導ブームがあり、この物質は引力が中間領域にあるのではないかということで研究していましたが、「アカデミックな問題」すなわち実際の物質とはあまり関係ないという位置づけでした。
その後、アルカリ原子系(ボソン)のボース凝縮が実現し、さらにはフェルミオン系でもその引力を人工的に制御することでボース凝縮をコントロールできるようになりました。
この分野は実験的実現ができてからこのかた、かなりホットな分野として成長してきました。何かに応用できるかは全く未知数な問題ですが、純粋にアカデミックな興味で理論的な勉強をしたいという方があれば、一度相談に来てください。
必要な知識:大学理工系1,2年程度の数学、量子力学・統計力学・電磁気学・固体物理(BCS理論)