開催報告(第112回)

ご先祖様はいずこから?ご消息は?
〜微生物の起源と進化〜

講師 : 櫻井 宣彦 氏(名古屋市立大学・准教授 / 専門:環境微生物学)
日時 : 2016年08月26日
会場 : 7th Cafe (中区栄・ナディアパーク7階)


 当日は多くの方々にお集まりいただきまして,ありがとうございました。幾度と,やらせていただきましたが,参加人数が増加しているのは,名市大のサイエンスカフェが定着してきた証拠でもあるのでしょう。いつ,ネタが切れるか,毎回毎回,冷や冷やしておりますが,純粋な専門以外の分野が案外,わかりやすいのか,比較的好評ですので,話題提供者の普段の情報収集が重要であるのだろうと思います。

 今回のサイエンスカフェは以前,私が担当した回(第17回『地球大気とタンパク質分子の進化〜細菌と人と環境と〜』)を練り上げて,特に,一般の方にも興味が持ってもらえるように再構成しました。話題を小さく分け,1)地球大気の歴史と微生物の進化,2)呼吸の起源とタンパク質分子の進化,3)脱窒,の3つの小話題で話を進めました。1)では地球46億年の歴史を大気と微生物の進化といった観点で説明しました。比較的簡単なクイズや,問題提起を織り交ぜ,興味をもってもらえるよう工夫をしました。2時間,話題提供者が一方的に話を続けると,飽きが生じることを経験的にわかっておりましたので,インターネット上の関連分野の動画を集め,編集して10分程度の短い動画として提示しました。2)では口から吸入した酸素分子の行方を丁寧に説明し,最終的にシトクロムcオキシダーゼ(呼吸鎖末端酸化酵素)にたどり着くことと,電子伝達系のプロトン輸送機構とATP合成の機構についてアニメーションを使用して説明を行いました。3)では地球上の窒素循環,脱窒菌による脱窒過程,そして脱窒菌のNOリダクターゼがシトクロムcオキシダーゼの祖先酵素であることを説明しました。2)や3)の話題については比較的,専門的な話題でしたので,深く知ろうとすると,短い時間ではかえってわからなくなりますので,できるだけ簡潔に説明しました。

 最後にヒトの体に住みつく微生物とヒトの細胞数の比較や,地球上の総バイオマス量としての微生物を知ってもらい,毛嫌いされている微生物の重要性を認識してもらいました。

 取扱い範囲が広く,話題提供者だけでは答えられなかった質問がありましたが,ご了承下さい。過去の進化の話は推定しかできない話でしたので,おのおの自分の意見を持ちやすかったのが,今回の話題を選んで良かったと思ったところです。


櫻井 宣彦(名古屋市立大学システム自然科学研究科)

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