Multiscale Retinexに基づいた視認性改善

 照明が不足している領域の被写体は,取得画像における視認性が悪くなります. 例えば,図(a)では,屋根の下の部分の様子がよく分かりません. 照明不足領域の視認性を改善する手法として,Jobsonらによりmultiscale retinex(MSR,参考文献1)が提案されています. この手法では「画素値は照明成分と被写体の反射率の積からなる」と仮定し,照明成分を推定,除去することで視認性の改善を行います. つまり,照明成分を除去することで反射率画像を得る手法となっています. MSRによる視認性改善結果を図(b)に示します. 確かに視認性は改善されていますが,大域的な照明成分が失われ,平坦な印象の画像となってしまっています. 関連論文1では,MSR処理画像(図(b))に対して,除去した照明成分の一部を付加する手法を提案しました. 図(c)がその処理結果です. 視認性の改善された,好ましい画像が得られているといえます.

RurikojiRurikoji_JobsonRurikoji_proposed
(a) 入力画像1
(b) 参考文献1の手法
(c) 関連論文1の手法

 また,公開された文献はありませんが,関連論文1の手法はカラー画像にも応用できます. その処理結果の例を図(d)~(g)に示します.

Rurikoji_colorRurikoji_color_proposed
(d) 入力画像2
(e) 関連論文1の手法(カラー版)
SunsetSunset_proposed
(f) 入力画像3
(g) 関連論文1の手法(カラー版)

「研究内容」へ戻る

【関連論文】

  1. 田中 豪,末竹規哲,内野英治,
    ``データ依存型multiscale retinexによるディジタル画像の画質改善,''
    電子情報通信学会論文誌(D),vol.J91-D, no.9, pp.2422-2425, Sept. 2008.

【参考文献】

  1. D.J. Jobson, Z. Rahman and G.A. Woodell,
    ``A multiscale retinex for bridging the gap between color images and the human observation of scenes,''
    IEEE Trans. on Image Process., vol.6, no.7, pp.965-976, July 1997.