ジョンイネスセンター2005 of K'sLab

名古屋市立大学大学院 システム自然科学研究科
木藤研究室(生体制御情報系・植物生命科学研究分野)

活動報告

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海外渡航報告
英国ジョンイネスセンター留学(2005)

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再び英国へ

Norwich-1.jpg夕刻7時半、イギリスの片田舎にあるノーリッジ空港に降り立った。アムステルダムで飛行機を乗り継いだため、日本を発って16時間後の到着である。簡素な入国審査をすませて荷物を受け取り、小雪が舞う中、タクシースタンドに並んだ。目の前に広がる風景を眺め「ここで半年過ごすのか」という気持ちが漠然と頭をよぎった。半年前のことである。

事件発生

暗いタクシースタンドで10分ほど待ち、やってきたロンドンタクシーに乗り込み宿泊先のB&Bへと向かった。当然、数十分後に起こる小さな事件のことは想像もしていない。街灯もない田舎道を30分ほど走り、一軒の民家の前で降りた。長旅の終わりである。しかし、何かがおかしい。B&Bの看板がない。代わりに目に飛び込んできたのはFor Saleと大きくかかれた看板だった。

B&Bは民宿のような宿泊施設で外見からは一般の家と見分けが付かないことも多い。しかし、売り家は少々変である。明らかに、宿泊予定のB&Bではない場所で降ろされていた。視界から遠ざかっていくタクシーを恨めしそうに見つめ、「まずいことになった」と悟った。何しろそこは街灯もない郊外の住宅街、電話のない。仕方なく、明かりが漏れている家のベルを押し、見知らぬ人にお願いして助けてもらう羽目となった。到着早々の失敗である。

イギリスでは自分の家に勝手に名前を付けている場合が少なくない。例えばStephen 119が本来の住所なのにStephen 119 Alexandriaと言う具合に。たまたまAlexandria119と言う住所が存在し、下手な英語で行き先を告げたために間違えられてしまったのである。今回の渡英は、このような小さな事件から始まった。

B & B

BB.jpgB&Bに着いたのは10時近かったと思う。2階にある6畳ほどの小部屋に案内され、眠りについた。翌朝、朝食をとりにキッチンに行くと、うらやましい限りの広大な裏庭が広がっていた。300坪はあったと思う。冬なので花は咲いていなかったが、芝生が敷き詰められリスが戯れていた。決して豪邸ではなく、イギリスの地方都市では普通の家であるがとても優雅である。玄関先の駐車スペースでさえ、我が家より広いくらいで羨ましい限りである。
食事の際、オーナーがポーランド出身であることを話してくれた。二十歳をすぎてから母親と二人でイギリスに移住し、数年前に退職してからは、たまに訪れる客相手にB&Bをしながらボランティア活動に精を出しているそうだ。日本で気ぜわしく働いていた労働者とは異なる時計を持ち、人生を楽しんでいるように見えた。

ジョンイネスセンター

CDean.jpg翌朝、道も分からないだろうと心配してくれたオーナーがジョンイネスまで送ってくれた。半年間の仕事場である。ジョンイネスは植物研究に特化した世界的に有名な研究所で、ヨーロッパ一(たぶん世界一)の規模を誇っている。研究環境も申し分なく整備されおり、研究に没頭するには最高の環境である。私は、キャロライン ディーン 教授のラボに滞在させてもらい春化を解き明かすための研究プロジェクトの一員として半年を過ごした。

妻の失敗

ある日、仕事から戻ると妻が血相を変えて待っていた。「大変なことをしてしまった」と言うので、気構えて話を聞いてみる。すると、「カードがATMに食われてしまった」と言う。重大な失敗を想定して聞いたので、話の内容を聞いて胸をなで下ろした。イギリスでは良くあることで、機械の調子が悪いとカードが返ってこない。一度のみこまれるとカードは使用不可能な状態になってしまうが、再発行してもらえば良い。しかし、更なる妻の説明に事の重大さに気づいた。なんと、カードは日本に戻らないと再発行してもらえず、このままだとイギリスで現金を得る手段が無くなる。確かに妻は大変なことをしてしまったようだ。その夜はお金の工面に日本へ電話をかけ、多くの人に迷惑をかけた。2ヶ月後、私は別のカードで妻と同様の失敗をした。しかも暗証番号を間違えるという基礎的ミスで。

ラベンダー園へ

Lavender2.jpg7月の休日にラベンダーを見に行くことになった。目的地はノーフォークラベンダー園。地図をみると住んでいる町からは100キロ程度の距離だ。しかし、電車も走っておらず地方バスを何度か乗り継いでの面倒な移動となる。ラベンダー畑を想像しながら早朝6時のバスに乗り込み、意気揚々と目的地を目指した。目的地の正確な場所は把握していなかったが、何とかなると思っていた。しかし、バスを降りたところは小さな集落、一面に広がっているはずのラベンダー畑はどこにも存在しない。乗車時にドライバーに目的地で降ろしてもらうように頼んでいたが、話が通じていなかった可能性がある。早く降りてしまったと考えた。しかし、次のバスは1時間先で、待つのも馬鹿らしい。とりあえずバス通りに沿って丘陵地帯をテクテクと歩いて行くことにした。ようやく人に遭遇したのは30分ほどしてからのことである。道を聞いてびっくり、なんとラベンダー畑は降りたバス停から500メートルほど別の方角に歩いていった所にあったのである。思いこみが原因の大失敗である。来た道を引き返してラベンダー園に着いたのは、お昼だった。ラベンダー見たさに6時間の移動である。これだけですめば良かった。しかし、運のない時は不幸が重なる物で、食事後に新たな事件が勃発した。なんと大きな蜂に指先を刺されてしまったのである。一瞬の出来事であった。ラベンダーにふれて匂いが移っていたのかもしれない。とにかく痛くてラベンダーどころでなくなったのはご想像の通りである。疲れ果てた上に痛い思いをして散々な休日になってしまった。

帰国

NR151N1.jpg帰国の日を迎えた。早朝空港に向かい搭乗手続きをすませた。しかし、その後に最後の一波乱があった。なんと、飛行機に整備不良で出発時間が大幅に遅れたのである。直行便であれば特に問題は無いが、今回はオランダで飛行機を乗り継いで日本に戻ることになっていた。当然、オランダで飛行機が待っていてくれるはずもなく、乗り遅れれば一大事である。幸いなことにギリギリで間に合い無事に搭乗することができたが、空港でおみやげを買う時間は泡と消えた。最後に冷や汗をかいた。荷物は当然間に合わなかったが、そのおかげで航空会社が自宅まで無料で荷物を届けてくれた。重い荷物を抱えて電車に乗らなくてすんだ分、本当は、運が良かったのかもしれない。.

久しぶりに実験に没頭できて非常に有意義な時間を過ごすことができました。雑用に追われなかったせいかアイデアも浮かび、それなりの成果も得られました。留守中に迷惑をおかけした皆様には、この場を借りて御礼申し上げます。

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