Helmholtz-Kohlrausch効果を考慮した彩度強調

 色は「明度・彩度・色相」の3要素で表現することができ,例えばCIELAB色空間では,その3要素を定義できます. したがって,明度及び色相を不変に保ち,彩度のみを強調する処理が可能であるといえます. しかしながら「鮮やかな色は明るく見える」というHelmholtz-Kohlrausch(H-K)効果と呼ばれる現象があります(参考文献1, 2). すなわち,CIEの期待する観測者では明度・彩度・色相は独立な要素となっていますが,実際にはそうではなく,彩度が高い色は等明度・等色相の低彩度色よりも明るく見えます. また,彩度増加による明度の変化度合は色によって異なります.
 図(a)の色をCIELAB色空間の値で表現し,彩度のみを強調したものが図(b)です. 特に,紫の風船が明るく感じられると思います.

balloonballoon_NHKballoon_HK
(a) balloon
(b) 通常の彩度強調
(c) H-K効果を考慮した
彩度強調

 H-K効果を考慮し,知覚的な明度を保存した上で彩度のみを強調する手法(関連文献1)を提案しました. 提案手法では,彩度強調に伴う知覚的な明度増加に応じて,明度を調節します. 図(c)における紫の風船の明度は図(a)よりも低下していますが,見た目の印象では同程度の明るさに感じられると思います.

「研究内容」へ戻る

【関連文献】

  1. 田中 豪
    ``明度及び色相の影響を考慮した彩度強調法,''
    電子情報通信学会技術研究報告SIS2012-32,vol.112, no.348, pp.19-22, Dec. 2012.

【参考文献】

  1. 日本色彩学会(編),
    新編色彩科学ハンドブック第3版,
    東京大学出版会,東京,2011.
  2. M.D. Fairchild and E. Pirrota,
    ``Predicting the lightness of chromatic object colors using CIELAB,''
    Color Research and Application, vol.16, no.6, pp.385--393, Dec. 1991.