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更新日 2014-12-26 | 作成日 2007-11-22

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脱窒過程とは

Nitrogencycle.png地球上の窒素循環脱窒過程(Denitrification)とは水溶性の硝酸態窒素がガス状の窒素化合物として大気中に放出される現象を指します。硝酸イオンから分子状窒素までの完全脱窒は細菌に限られた能力であり、亜硝酸イオン、一酸化窒素分子、亜酸化窒素分子を経由する4段階の反応から構成されています。それぞれの反応は硝酸還元酵素(NAR)、亜硝酸還元酵素(NIR)、NO還元酵素(NOR)、亜酸化窒素還元酵素(N2OR)の4種の金属酵素により触媒されます。これらの反応は、ニトロゲナーゼ複合体によって大気中より固定化された結合型窒素を分子状窒素として大気中に戻す生物反応として、地球上の窒素循環に対し重要な役割を担っています。

脱窒菌はなぜ脱窒するのか

電子伝達系.png電子伝達系 脱窒は別名硝酸塩呼吸とも言われ、嫌気的呼吸の一種です。ヒトの場合、呼吸とは酸素に電子を渡し、水に還元するエネルギーによりプロトン濃度勾配を形成し、そのプロトン濃度勾配によりATPを合成します。同様に脱窒菌の硝酸塩呼吸の場合、酸素の代わりの電子の捨て場として、硝酸イオン、亜硝酸イオン、一酸化窒素分子、亜酸化窒素分子を利用し、ATP合成を行います。これを異化型硝酸還元と言います。ところで脱窒菌は有酸素状態では通常の酸素呼吸を行い、硝酸や亜硝酸が存在し、無酸素条件下に移行すると硝酸塩呼吸を始めます。このようなコントロールは遺伝子の転写レベルで行われていますが、その機構の解明も当研究室の目標の一つです。

私たちの生活と脱窒菌

 自然界での脱窒過程の重要さは上記の通りですが、人間社会での脱窒菌は廃水処理に利用されています。排水中からの窒素およびリンの除去は、湖沼富栄養化を防止するために最近の水処理に対して要求されるようになりました。窒素の除去法としては硝化・脱窒プロセスからなる生物学的処理法と物理化学的処理法の2通りがあります。生物学的処理法はその原理機構が解明されていますし、利点が多いので窒素除去法の主流になると考えられます。私たちは脱窒プロセスの遺伝子レベルでのコントロールや好塩性脱窒菌の適用を夢に研究に励んでおります。

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