ジョンイネスセンター2002 of K'sLab

名古屋市立大学大学院 システム自然科学研究科
木藤研究室(生体制御情報系・植物生命科学研究分野)

活動報告

ビルボード写真.jpg

海外渡航報告
英国ジョンイネスセンター留学(2002)

JIC1.jpg

ジョンイネスセンター

MyPhoto.gif時間の経過は早いもので、冬の夕暮れ時にヒースロー空港に降り立ちコーチバスに4時間揺られてジョンイネスのあるノーリッジの町に着いてから早くも4ヶ月が過ぎてしまいました。6ヶ月の予定で留学しているので残すところ2ヶ月となってしまい少し焦りながら筆をとっています。ジョンイネスは主に植物を研究対象としているヨーロッパ最大の研究施設で、正確な数はわかりませんが総勢で千人近い人が働いていると思います。それでも建物がゆったりとした作りになっていて非常に快適な空間で実験に従事できる環境が整えられています。当然ながら研究をサポートする体制も十分に整備されており、日常的に使用する試薬の調製や洗い物等は各フロアーに配置されているメディアキッチンのアシスタントが担当してくれます。また、試薬類は研究所内に設置されているストアーで大量に一括購入されていて、通常の実験に使用する試薬であれば欲しいときに何時でも安価に手に入れられる仕組みになっています。急いでいるときは非常に便利です。さらに、大小さまざまなミーティングルームやコンサートホールのような大ホールが設置されており、毎日のように様々なセミナーが開催されています。なかでも金曜日に大ホールで開催される金曜セミナーには世界中から著明な研究者が講演に訪れ、最新の話題が提供されます。セミナー終了後には演者を囲んだ昼食会が設けられ、サンドイッチ等の軽食が無料でふるまわれています。講演を聴かずにちゃっかり食事だけとりにやってきている人たちも見かけたりしますが、十分な量が準備されているので問題はないようです。他にも羨ましく感じる点は多々ありますが、何より素晴らしいのは図書館にある豊富な雑誌の種類です。植物分野に限って言えば世界中の雑誌が購読されており、驚くことに日本の学会誌すらそろっています。研究所全体が主に分子細胞生物学という同じ分野の研究を行っているから可能なのでしょうが、参考文献を取り寄せるのに日頃から面倒な思いをしている筆者にとっては羨ましい限りです。ここまでは良い点だけを羅列しましたが、悪い点が無いわけではありません。たとえばシークエンスは研究所内のゲノムセンターにサンプルを持ち込み解析してもらう仕組みになっていますが、依頼してから結果を受け取るまでに2週間はかかってしまいます。とても待っていられません。また、任意の時間でオートクレーブにかけたい試薬があってもすぐには対応してもらえなかったりします。いずれも研究のサポート体制が整っているがゆえの欠点ですが、急いでいるときは自分でできたらと思ったりもします。また、研究所全体がオープンな作りになっているので同じフロアーのラボで共用している機械も少なくありませんが、責任の所在がはっきりしないためかラボ専用の機械に比べると汚れが目立ったりもします。どこの世界にもルーズな人が必ずいて、クリーンベンチなどはコンタミしないのが不思議なぐらいです。あとは実験室には個人で持ち込んだラジオやオーディオ機器があふれており、常に複数のスイッチが入れられています。文化の違いでしょうが筆者には多少うるさく感じることもあります。

misc016.gif少し話は変わりますが、文化と言えば英国ではやはりティータイムの習慣です。筆者の滞在しているラボでは10時半近くになると「ティー?、ティー?」と言う声が聞こえてきます。彼らは午前と午後に一度ずつ研究所内に設置されたカフェにお茶を飲みに出かけていきます。最初は誘われるがままについて行っていましたが、いちいち実験を中断しなくてはならないので断っていたら最近では誘われなくなってしまいました。彼らの目には気持ちにゆとりもない東洋人と映っているかもしれません。ただ、他の西洋諸国からやってきているラボのメンバー達もほとんど同行しないので英国人特有の文化だと思います。ただし、紅茶はミネラル分を沢山含んだ硬水でいれるためか色も香りも良く、日本で飲むよりも確実に美味しく感じます。逆に緑茶が美味しくいれられないので自宅では紅茶を愛飲しています。他に文化の違いで感じるのは物の消費に対する価値観の違いです。裕福なラボという非常に限られた空間だけしか見ていないので間違った認識かもしれませんが、手を洗うたびに使われる大量のペーパータオルや一度使用されただけで捨てられてしまうビニール手袋、完全に閉められないで流れっぱなしになっている水道水などを見ていると勿体ないと感じてしまいます。ちなみに何台も設置されている冷却遠心機は1年365日電源が落とされることはありません。

ヒルハウス(宿舎)とノーリッジの町

HillHouse.jpgここで話題を変えて研究所以外のことも紹介します。ジョンイネスには敷地内にヒルハウスと呼ばれる短・中期滞在者のための宿泊施設も設けられています。筆者も3週間ほど活用させてもらっていましたが、家具付きで非常にゆったりとした作りになっており家族ですむことも可能な施設です。名前の通り芝生に囲まれた小高い丘の上に立っていて窓からは野ウサギが戯れる姿なども見かけました。ノーリッジでは珍しく熱いお湯もふんだんに使えて非常に快適な宿泊施設です。ただし、歩いていける距離には隣接するイーストアングリア大学のコンビニエンスストアーぐらいしか食材を購入できる場所がないので、まともな食事をとるにはバスに乗ってノーリッジの町まで買い出しに出かけなくてはならないという欠点はありました。ここでノーリッジの町についても少し紹介します。ノーリッジはノルマン人がやってくる前にアングロサクソンによって開かれたイングランドの古都で、町中には大聖堂をはじめ非常に多くの教会が建ち並んでいます。シティーセンターと呼ばれているわずか1キロメートル四方の中心街に57もの教会があり、その数はヨーロッパでも有数だそうです。また、町のあちこちにシティーウォールをはじめとした中世の佇まいが残っていて非常に奇麗な町です。Cathedral.jpgちなみ町と書いていますが大聖堂を抱えているのでタウンではなく立派なシティーです。また、サッカーのクラブチーム:ノーリッジシティーの本拠地でもあります。なんでも創部100年を越える伝統チームだそうです。今年は久しぶりに訪れた一部リーグに昇格できるチャンスで町が大変盛り上がっていました。昇格を決めるブリストルとの最終戦にはノーリッジから大応援団が出かけて行きましたがPK戦で惜しくも破れてしまいました。テレビ中継を見ながら筆者も応援していたので非常に残念でした。たわいもない話を続けて書いてしまいましたが、最後に英国への留学を快諾していただいた江尻先生をはじめ寒冷バイオシステム研究センターの諸先生方にはこの場を借りて厚く御礼申し上げます。

milk_btn_prev.png

|1|2|3|4|5|6|7|8|

milk_btn_next.png