植物DNAバーコード of K'sLab

名古屋市立大学大学院 システム自然科学研究科
木藤研究室(生体制御情報系・植物生命科学研究分野)

植物DNAバーコード研究

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周伊勢湾要素植物群のDNAバーコード整備計画

DNAバーコード(植物)

はじめに

 地球上には1000万種を超える生物が生息していると推定されているが、分類学的に同定されている生物種は175万種(植物は27万種)に過ぎない。未発見の生物の多くはウイルスや微生物であるが、植物についても5万を超える種が未分類のまま放置されていると試算されている。それらの生物を生物資源として有効利用するためには、既知の生物種を含めた種の同定と分類作業が必要不可欠である。そこで脚光を浴びているのが生物の遺伝子情報に蓄積した塩基配列の差異をDNAバーコード情報として収集するDNAバーコードプロジェクトである。配列データは、種の分類や同定、新種の発見、分子系統進化学の発展、植食性野生動物の食性解析、害虫や天敵の同定、新薬の開発、食の安全性評価をはじめとした多種多様な分野で利用することができる。
 DNAバーコード解析を進める上で最も重要なのはバーコード化するDNA領域の選択である。ゲノム情報を全て解読するのが理想であるが、技術面やコスト的な問題があり、生物種間で多くの変異が蓄積している特定DNA領域に限定して解析が行われているのが現状である。そのため、情報の共有化を考えると、独自に選択した遺伝子領域のDNAバーコード情報を収集するのではなく、先行するプロジェクト研究で利用されている遺伝子領域のDNAバーコード情報を収集する必要がある。一般に、動物ではミトコンドリアDNAのcytochrome c oxidase I (COI)遺伝子が利用されているが、植物では種間で当該遺伝子の塩基置換が少ないため、塩基置換速度が速く変異が蓄積しているリボソームDNAのInternal transcribed spacer(ITS)領域、プラスチドDNAのtrnH遺伝子とpsbA遺伝子の間に存在するスペーサー(trnH-psbA)領域、同じくプラスチドDNAのmaturaseK(matK)遺伝子やriburose-1,5-bisphoshate carboxylase/oxgenase large subunit (rbcL)遺伝子等が主に使われている。後者の3遺伝子はプラスチドの遺伝子で細胞当たりのコピー数が多いため、核コードの遺伝子に比べて解析しやすいという特徴も備えている。また、採取した植物体に付着した微生物や動物の影響を受けにくいという利点もある。ただし、いずれも近縁種の多様性を100%識別できるものではなく、同一種内の亜種や品種間では全く塩基置換が起きていない可能性も高い。したがって、目的によっては複数の遺伝子領域を対象に解析を進める必要がある。

研究計画

地域の固有種(周伊勢湾要素植物群)を対象に、順次DNAバーコードデータを収集していく計画である。蓄積したデータは、植物の同定や分類、系統進化を議論する上で役立つと期待できる。

関連研究

 かなり古いデータではあるが、関連する研究成果としてEF-1A遺伝子の配列データを活用して作成した分子進化系統樹を示す。

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