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研究内容

クロマチン情報は一過的な遺伝子発現調節に重要な役割を果たすだけでなく、細胞分裂後も維持されることにより、エピジェネティクス機能を持つことが明らかとなってきました。「如何にしてクロマチン情報が生命機能へと展開されていくのか?」酵母をモデル系としてヒストンと相互作用する因子群を機能複合体として解析するというアプローチから以下のテーマに迫ります。

I. クロマチン形成の分子基盤
II. クロマチン機能制御ネットワークと遺伝子発現調節
III. ヒストンメタボリズムと細胞増殖

キーワード:ヒストン複合体、クロマチン制御、遺伝子機能発現、エピジェネティクス

 現在、出芽酵母および分裂酵母の系を用いてクロマチン制御の解析を開始しています。内在性のプロモーター下で細胞周期制御が働いている条件下でヒストン複合体を解析することで、クロマチン形成装置のみならず、ヒストンを介した様々な制御が解析できる利点を活かし、複合体精製を新しいスクリーニング法の一つとして解析を進めています。ヒストンと相互作用する全ての因子を同定すると同時に、それらの生理機能を生化学的、遺伝学的に解析することによりクロマチン形成経路とヒストンメタボリズム制御機構の分子基盤の解明を目指します。

 クロマチン構造はDNA複製や転写、DNA修復といった様々な制御と密接に関わるため、ヒストンと相互作用する因子群をそれぞれ機能複合体として解析することにより、クロマチン制御ネットワークを網羅的・統合的に理解できることが期待されます(図1)。特に、クロマチン形成の分子機構とS期チェックポイントや遺伝子発現制御との関連、ゲノム安定性や細胞の癌化機構まで研究を展開しようと考えています(図2)。酵母は高等真核生物の有用な体細胞モデル系としてよく知られています。分裂酵母は、高等真核生物に比較的近いクロマチン制御系(ヒストン化学修飾、RNAiなど)をもつため、その分子機構と生理的役割について明らかする優れたモデル系となることが期待されます。

 また、出芽酵母、分裂酵母、ヒトのヒストン複合体を解析した結果、クロマチン形成およびその制御に関して、共通の分子基盤が見えてきただけでなく、戦略のバリエーションについても明らかとなってきました。今後、遺伝学が容易でゲノム情報が活用できるという利点を充分に活かしながら研究を展開したいと考えています。ヒストン/クロマチンを介する(エピ)ゲノム情報の維持と生命機能への展開について、いくつかのモデル生物の機能複合体を比較解析することで、その分子機構の多様性、進化についても新たな知見が得られることも期待されます。

 将来的には、「機能的複合体解析」をキーワードに生化学、分子遺伝学、細胞生物学といった従来の分子生物学分野とゲノミクス、プロテオミクス、インフォーマティクスといったシステムスバイオロジーを融合させる新研究領域の創造を目指したいと考えています。こういった研究の方向性は、単なる網羅的解析によるカタログ作りからより有機的な生命機能の理解に向かうことが期待されます。

図1:クロマチン構造形成はDNA複製や転写、DNA修復といった様々な制御と密接に関わる

図2:ヒストンメタボリック経路とヒトのヒストンH3-H4複合体

クロマチン形成は新規ヒストンの合成から分解まで、細胞の増殖や細胞周期と関連して厳密に制御されている。ヒトのヒストン複合体解析からこれら一連の形成経路に関与する因子が分かってきた。今後、ダイナミックなこれらの制御について解析を進める。