生物多様性コラム(第5回)

クスノキ

(学名:Cinnamomum camphora

2014.4.14

滝子キャンパスの大楠(右:推定樹齢100年) クスノキ科ニッケイ属に属する常緑高木で、5月から6月にかけて、白く淡い黄緑色の小さな花が咲きます。クスノキは名古屋市の「市の木」でもあることから、市内各所で見かけます。市の木に選定された理由は「LinkIcon名古屋市のページ」をご覧下さい。市内のあちこちに大木があり、成長が早いことなどから市民の人気が高いそうです。名市大滝子キャンパスには何本かのクスノキの巨木があります。クスノキ科の植物はアオスジアゲハの食草でもありますから、もしかすると、名古屋市では、他都市よりもアオスジアゲハがたくさん生息しているかもしれませんね。

 学名をCinnamomum camphora といい、属名からも想像がつくように樹皮が香料(ニッキ)に使用されるシナモンと近縁です。シナモンの香りの主成分であるシンナムアルデヒドと言う名前はこの植物の属名に由来します。クスノキ自身にも、皆様がよくご存知のように特有の香りがあり、その主成分は樟脳(しょうのう)ですが、英語ではカンファーといい、クスノキの種名と同じ語源です。樟脳は、昔はタンスの防虫剤として汎用されており、年配の人にはタンスのにおいとして懐かしい香りです。最近は、防虫剤としては、他の化合物に主役の座を譲っています。同様に、樟脳は、昔は「カンフル剤」として使われていたこともあるようですが、これも今では名前がのこっているだけで、使われていません。

熱で葉にできたリング
クスノキとその近縁種の葉っぱは、葉の表側からタバコの火を近づけて暖めると、黒いリングが現れるので、他の植物から区別することができます。タバコを吸わない方は、線香で暖めたりして、ためしてみてください。(写真:左)


 常緑と書きましたが、常緑樹も実は落葉します。ちょうど新芽が伸びて葉が展開し始めるこの時期に、古い葉はあかっぽくなり、どんどん落葉していきます。落葉広葉樹が、秋に落ち葉掃除が大変だと思われていますが、実は常緑広葉樹でも落葉することにかわりはありません。ただ、木が裸の幹と枝だけにならないので、目立たないだけです。(写真:下)


春は枯れ葉と新芽が混在しています
葉に見られるダニ室  クスノキの葉は、主脈の根本近くから左右に一対のやや太い側脈が出る三行脈です。この側脈の付け根にダニ室という小さなふくらみがあります(写真:右)。落葉するために、春がダニが一番少なくなるそうです。このダニが何をしているのか、よくわかっていませんが、名古屋大学の西田佐知子先生が熱心に研究しておられます。興味のある方は、LinkIcon西田先生のホームページを訪問してみてはいかがでしょうか。

(自然薯子)

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