生物多様性研究センターの主催セミナーおよび講習会などのお知らせです。

第131回システム自然科学研究科セミナー&第41回生物多様性研究センターセミナー

希少種の保全繁殖研究について(2016年3月17日開催)


  •  現在、地球上の多くの動物たちが絶滅の危機に瀕しており、IUCNのレッドリストにおいても、哺乳類の場合、現存する種のおよそ20%が「危急種(近い将来絶滅の危機がある)」以上のランクに分類されている。野生動物の絶滅を回避するためには、生息域内で保全されることが本道であるが、生息環境が保全に適さない環境にまで悪化している場合は、生息域外(動物園など)での保全が必要とされる。しかし、現実にはたとえ一つの種といえども、生息地の環境が回復して野生復帰が可能となるまで、飼育下の限られたスペースで遺伝的多様性を損なわずに一定の個体数を維持し続けるのは至難の業である。  これまで発表者は、飼育下での希少種の繁殖効率の向上を目指し、主に性ホルモン分析による雌の交配適期の予測や生殖細胞の保存および人工授精について研究を行ってきた。
  •  本発表では、動物園での雌の繁殖生理のモニタリングに関する研究事例を基に、動物園での保全繁殖に関する取り組みを紹介したい。また、野生動物と動物園での飼育動物の両者を対象とした研究事例についても紹介し、野生下と飼育下(動物園)を融合した研究の可能性についても触れたいと思う。

    • 日時:2016年3月17日(木) 16:00〜
    • 場所:滝子キャンパス4号館3階 大講義室
    • 講師:木下 こづえ 氏(京都大学霊長類研究所 助教)


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第120回システム自然科学研究科セミナー&第40回生物多様性研究センターセミナー(終了しました)

胎盤発生に関与するウイルス由来の遺伝子の進化(2015年4月22日開催)


  •  ウイルスが生殖細胞に感染することにより、宿主のゲノムにウイルスの塩基配列が内在化して子孫にも伝播することがある。そのような配列をEVE(Endogenous Viral Elements)といい、哺乳類のゲノムの全領域の10%前後を占める。近年EVEの一部が胎盤の発生、ウイルス感染の抵抗/促進、細胞の分化に働くなど、宿主内で様々な機能を持つことが明らかになってきた。そのようなEVEの多くは、宿主で機能する場合を含めて進化的に保存されないことが多い。例えば、レトロウイルスのenv(エンベロープ膜蛋白質)由来のsyncytin遺伝子は、母体の子宮内膜と接するシンシチウム細胞で発現し、細胞融合や母体免疫の抑制などに関与する。しかし、霊長類や齧歯類などで見つかったsyncytinは機能的にはほぼ相同であるにもかかわらず、異なるレトロウイルス由来である。我々はウシの胎盤発生に関与するEVEを探索し、ウシの胎盤で発現するFematrin-1とBERV-P envを発見した(Nakaya et al. JVI 2013, Nakagawa et al. GBE 2013)。とくにFematrin-1はウシの二核細胞で特異的に発現し、細胞融合能を持つことが分かった。これらの遺伝子はウシ属特有の遺伝子で、他の反芻動物には見つからなかった。更に、哺乳類におけるEVEのダイナミックな進化を網羅的に解析するために、私は19種の哺乳類のゲノム配列を対象として、80アミノ酸以上をコードするEVEを網羅的に同定した。本セミナーではそのように胎盤発生に関与するEVEについて、そして哺乳類でのEVEの比較解析などの研究成果を報告したい。

    • 日時:2015年4月22日(水) 15:00〜16:30
    • 場所:滝子キャンパス4号館3階 大講義室
    • 講師:中川 草 氏(東海大学 医学部 基礎医学系 分子生命科学)


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生物多様性研究センターへのご連絡はセンター長の熊澤慶伯までお寄せ下さい。電子メールは、biodiv[@]nsc.nagoya-cu.ac.jpです。