生物多様性コラム(第1回)

ネジバナ

(学名:Spiranthes sinensis var. amoena)

2013年6月18日

キャンパスに咲くネジバナ
ラン科ネジバナ属の小型の多年草。別名モジズリ(綟摺)ともいいます。

6月になり、この滝子キャンパスでもネジバナを見かけるようになりました。

水はけがよく、日当りのよいところを好むので、たいていは芝生に混ざって生えています。

20〜30cmの1本の花茎の上部1/3くらいに1つが数ミリくらいの小さなピンクの花が20個くらい螺旋状に並んで咲いています。学名のSpiranthesはギリシャ語のspeira(螺旋) + anthos(花) に由来しています。ただし、この螺旋につく花のつき方は、アサガオの蔓のように、遺伝子で支配されているわけではなく、よく観察してみると、右巻きと左巻が半々に見つかります。ピッチもいろいろあり、中には縦一列にならんで咲いている花もあります。

小さいながらも立派なランの一種で、よく見ると、シランとよくにた花の作りです。日本全土で昔から見られており、別名のモジズリというのは、東北地方の信夫郡(しのぶぐん)で作られていた織物「信夫捩摺り」のよじれた模様と花のつき方が似ているところから、このように呼ばれるようになったようです。「みちのくの しのぶもじずり たれゆえに みだれそめにし われならなくに」という句が百人一首の中にありますが、この「もじずり」がネジバナのことです。

ラン科の植物としての面白い話もいろいろとあるのですが、それはまた別の機会に譲ることにします。

皆さんも、芝生や雑草の中に、小さなピンクの花が咲いているのを見かけたら、たまにはよく観察してみませんか。

(自然薯子)

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