湯川研究室(用語解説)

専門用語解説

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in vitro 系 (in vitro system)

 生体内で行われる生化学的反応を、細胞抽出液を用いて試験管内で再現する無細胞反応解析法。in vitro 転写系やin vitro 翻訳系などがある。当研究室では主に、タバコの核の in vitro 転写系と葉緑体の in vitro 翻訳系の研究開発、およびそれを用いた遺伝子の発現機構の研究を行っている.

葉緑体(chloroplast)

 植物における光合成の場。シアノバクテリア型の生物が真核細胞生物に共生したものと考えられる。したがって、遺伝子発現系は原核生物型を基本とする構成であるが、未知の部分も多い。遺伝子発現の制御は主に翻訳(タンパク合成)で行われる。

緑色蛍光タンパク質(GFP)

 2008年ノーベル化学賞を受賞した下村 脩さんがオワンクラゲから発見したタンパク質であり、紫外線があたると緑色の蛍光を発する。分子量が比較的小さく、非常に安定であることから、様々な遺伝子の実験に用いられる。

RNA ポリメラーゼ(RNA Polymerase)

 遺伝子の本体である DNA (デオキシリボ核酸)から、遺伝子配列のコピーを RNA(リボ核酸)へ転写する働きを持つ複合体。細胞内では独自のゲノムを持つ3つのオルガネラである核、葉緑体、ミトコンドリア内にそれぞれ存在する。核の中には3つの RNA ポリメラーゼが存在する。

核に局在するもの

RNA ポリメラーゼ I
(Pol I と略記) リボソームRNAを転写
RNA ポリメラーゼ II
(Pol II と略記) mRNAと低分子RNAを転写
RNA ポリメラーゼ III
(Pol III と略記) tRNA、5S rRNA、snRNA等を転写
RNA ポリメラーゼ VI 、V
(Pol IV, V と略記) 遺伝子のサイレンシングに関与する。植物で最近見つかった。


葉緑体に局在するもの

NEP
核コード型、確かめられているのはファージ型
PEP
葉緑体コード型、大腸菌型

ミトコンドリアに局在するもの
 ファージ型

転移 RNA (transfer RNA: tRNA)

trna-line2.gif タンパク質合成の際に鋳型となる mRNA の読み枠(コドン)に対応するアミノ酸をリボソームまで運んでくる機能性 RNA。2次構造として高度に保存されたクローバーリーフ構造を持つ。原核生物から高等な生物まで構造が極めて保存されている。


植物培養細胞(Plant cultured cells)

IMG_0303.JPG BY-2 はタバコの培養細胞の一種。増殖速度の極めて速い非光合成性細胞。細胞周期の同調が容易で、人工培地で生育可能であり生化学的実験の材料として有用。植物の HeLa 細胞とも呼ばれている。

 MM2dはシロイヌナズナの培養細胞の一種。シロイヌナズナは全ゲノムが決定済みで、遺伝学的な知見も豊富であるが、植物体が小さく生化学の実験に不向きである。しかし、MM2d細胞は増殖が速く、タバコBY-2細胞に近い利点を有している。また、光が当たると緑化する。

 T87細胞は理化学研究所が配布しているシロイヌナズナの培養細胞で、常に光を当てて培養し、安定した緑色を呈する。細胞が固まりになりやすい性質があるが、光合成の研究に生かせる潜在性がある。

ノンコーディング RNA(non-coding RNA: ncRNA)

 タンパク質をコードしない(mRNA ではない)RNAの総称。最新のトランスクリプトーム(大規模転写物解析)で大量に見つかったことからゲノム機能の再考を余儀なくされている。

バイオインフォマティクス(Bioinformatics)

 コンピューターを利用してゲノムの機能を明らかにする学問分野。ゲノム DNA は A, C, G, Tの4つのヌクレオチドから構成される配列であり、情報処理技術とのなじみが極めてよい。

ポリメラーゼ連鎖反応PCR(Polymerase Chain Reaction)

 耐熱性 DNA ポリメラーゼとサーマルサイクラーを使って、DNA を短時間に10万倍以上に増幅する手法。クローニングを行わず均質の DNA を2~3時間で調製することができる。