山田麻未博士(奥津研・研究員)の論文が国際学術誌 The Journal of Physiology に掲載されました
研究分野 | 生命科学(分子生理学) |
掲載誌 | The Journal of Physiology |
論文題目 | Muscle-derived IL-1β regulates EcSOD expression via the NBR1-p62-Nrf2 pathway in muscle during cancer cachexia |
著者 | Mami Yamada, Eiji Warabi, Hisashi Oishi, Vitor A. Lira, Mitsuharu Okutsu |
所属機関 | 名古屋市立大学,筑波大学、アイオワ大学 |
概要 | 本研究では、がん悪液質は酸化ストレスを増大するが、骨格筋は分泌型の抗酸化酵素であるExtracellular Superoxide Dismutase (EcSOD)の発現と分泌を増加し、骨格筋を保護することを発見しました。次にEcSODの発現を制御する分子機構を探索した結果、EcSODが増加する分子機構にはSQSTM1/p62(p62)のリン酸化によるNrf2の核内移行が関与することを立証しました。このp62のリン酸化とNrf2の核内移行には、がん悪液質により増加する炎症性サイトカインであるIL-1βが関与することを発見しました。さらに、筋特異的にp62あるいはNrf2の発現を欠損したマウスの骨格筋にIL-1βを投与しEcSODの変動を評価しました。その結果、野生型マウスで見られるEcSODの増加は、骨格筋のp62やNrf2を欠損したマウスでは観察されませんでした。先行研究では、IL-1βに代表される炎症性サイトカインは筋萎縮を誘導する「悪い因子」として報告されています。本研究では、適度なIL-1βの刺激はp62のリン酸化とNrf2の活性化を誘導することでEcSODを増加し、筋萎縮を抑制に貢献する可能性を初めて立証しました。 |
掲載日 | 2024.8.21 |
DOI | 10.1113/JP285174 |
備考 |

IL-1βはNBR1の発現とp62のリン酸化を誘導し、Nrf2の核内移行を促進することでEcSODの産生を促進する。IL-1βは骨格筋を負に制御する炎症性サイトカインと考えられているが、骨格筋では筋肉の機能や形態を調節する重要な役割を果たす可能性がある。