大竹裕太さん(雨夜研・2025年3月学部卒業)の論文が国際学術誌 Synthetic Metals に掲載されました
研究分野 | 物質科学(有機合成化学) |
掲載誌 | Synthetic Metals |
論文題目 | Synthesis and characterization of stereo- and regioregular self-doped PEDOT bearing phosphonic acid groups |
著者 | Yuta Otake and Toru Amaya* |
所属機関 | 名古屋市立大学 |
概要 | 自己ドープ型導電性ポリマーは、ドーパント基が主鎖に共有結合していることからドープ状態の安定性に優れ、次世代の柔軟・軽量なエレクトロニクス材料として有望視されている。当研究室ではこれまで、従来用いられてきたスルホン酸基に比べて酸性が穏やかであり、かつ金属酸化物との高い親和性を有するという利点から、ホスホン酸基を導入した自己ドープ型ポリマーの合成に取り組んできた。本研究ではその発展として、ホスホン酸基を2つ有するC2対称なキラルEDOT(3,4-エチレンジオキシチオフェン)モノマーを設計・合成し、酸化重合によって立体規則性および位置規則性の制御されたPEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))系自己ドープ型ホモポリマーを得た(図1)。得られたポリマーは、トリメチルアンモニウム塩の形で水に可溶であり、薄膜状態では0.11 S/cmの導電性を示した。また、本ポリマーは長鎖アルキルアンモニウム塩で処理することで有機溶媒に可溶化でき、その溶液中では、側鎖から主鎖へのキラリティ伝播に由来する円二色性(CD)応答が観測された。CD応答と導電性という光学・電子両面での特性を兼ね備えていることから、本ポリマーはキラルセンシングや円偏光応答デバイスなどへの応用が期待される。本成果は、立体・位置規則性を備えたキラル自己ドープ型ホモポリマーの合成に初めて成功した例であり、キラル導電性材料の構造設計および光電子機能の開拓に新たな指針を与えるものである。 |
掲載日 | 2025.7.23 |
DOI | 10.1016/j.synthmet.2025.117922 |
備考 | 論文への無料アクセス(2025/09/17まで) |

図1 立体規則性および位置規則性の制御されたPEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))系自己ドープ型ホモポリマーの合成