名古屋市立大学大学院 理学研究科 総合生命理学部

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イベント情報

第145回「分子系統解析から紐解くインド・西太平洋ナガウニ類の進化史と地理的分布」

講師 金城 その子 氏(国立遺伝学研究所 生命情報研究センター)
日時 2018年5月30日(水),15:00〜16:00
場所 4号館3階 大講義室
概要  生物の系統関係の情報は、対象種がどのように種分化し、分散し、現在の地理的分布に至ったのかという問題を考える上で非常に重要です。系統関係の問題については、昨今のシーケンス技術の向上により、豊富なデータからのアプローチが可能となってきました。インド-太平洋域のサンゴ礁域に広く生息するナガウニ類は、近年同胞種が相次いで見つかり、且つ系統関係が解けていない生物種群のひとつです。ナガウニ類は現在少なくとも4つの同胞種、E. mathaeiE. oblongaE. sp. A、およびE. sp. Cが知られ、それらは特異的な地理的分布を示します:E. mathaeiE. oblongaはインド-太平洋域全体に広く分布しますが、E. sp. AおよびE. sp. Cの生息域は主にインド-太平洋域の中央部(インドネシア/ニューギニア周辺海域)に限られます。一方で、近年E. sp. Cに近縁とされる種が、インド-太平洋中央部から遠く隔たったアメリカ西岸および紅海でそれぞれ発見されたことで、ナガウニ同胞種群の種分化及び進化史への関心が高まりました。この問題に取り組むためには同胞種群の系統関係に関する情報が必要ですが、これまで種間関係については一致した見解がありません。その原因の一つとして、分子系統解析が少ないデータセット(ミトコンドリア遺伝子の中でも保存性の高いCOI遺伝子の部分配列)に基づいているということがあげられます。そこで本研究では、次世代シーケンサを利用して全ミトコンドリア遺伝子および5つの核遺伝子を解読し系統解析を行いました。ミトコンドリア遺伝子を連結したデータセットからは、E. sp. Aがまず最初に分岐し、次いでE. sp. C、最後にE. mathaeiおよびE. oblongaが分かれたという樹形 (EA(EC(Em, Eo))) がほぼ完全な信頼性をもって支持されました。一方、核遺伝子のほとんどは保存性が高く、ナガウニ類の系統関係について信頼性の高い結果は得られませんでした。
 本発表では、信頼性の高かったミトコンドリア遺伝子配列からの系統関係および現在の地理的分布に基づいてナガウニ種群の種分化と進化の歴史を考察します。また、遺伝子ごとの解析結果と結合配列による解析結果との違いについても議論したいと思います。本研究の成果の1つである、全ミトコンリア遺伝子および核遺伝子増幅に関する情報は、今後ナガウニ類の他地域の個体群や、他のウニ類の配列データを解読する上でも有用となることが期待されます。
連絡先 鈴木善幸(内線5821)
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※第48回生物多様性研究センターセミナーを兼ねる