概要 |
本セミナーでは日本の在来鶏がどこから来たのか、家禽化の起源であるタイの在来鶏と赤色野鶏が世界のニワトリの遺伝的集団の形成にどの程度関わったのかをお話しします。演者らはこれまで日本在来鶏の遺伝的多様性の解析を行ってきましたが、本年度、幸運にもニワトリ家禽化の起源であるタイの在来鶏およびニワトリの野生原種である赤色野鶏(Gallus gallus)の遺伝的調査に携わる機会を得ました。ニワトリのD-loop 配列にはA-E のメジャーな系統群(ハプログループ)とその他のマイナーな系統群(GHIWXYZ とその他)があることが明らかにされています。日本およびタイの在来鶏の、世界のニワトリ集団における系統的位置づけを行うには、これらのハプログループの地理的分布を押さえておく必要があります。そこで、データベースに登録されているおよそ7,000 のニワトリD-loop 配列から産出国情報のある約5,700 の配列を用いて、各配列の属すハプログループの同定を行いました。主成分分析の結果、ハプログループAB は東アジアに、CD は東南アジアからオセアニアに、E はインドから欧米諸国に、その他マイナーグループは南アジアに主に分布することが示唆されました。さらに日本の在来鶏とタイ在来鶏の近縁性を示すハプロタイプや、タイの赤色野鶏がこれまで報告の無い新たなハプログループを形成するD-loop 配列を保有することが分かり、ニワトリがアジアで家禽化され世界に広がった経緯の新たな一面が明らかになってきました。 |