名古屋市立大学大学院 理学研究科 総合生命理学部

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イベント情報

第159回「古生物ゲノム学から見た頭足類の進化」

講師 Davin H. E. Setiamarga(和歌山工業高等専門学校応用生物化学科・
准教授)
日時 2019年11月29日(金),13:30〜14:30
場所 4号館3階 大講義室
概要  石炭紀初期(約330 MYA)に出現したとされる現生八腕目(= “タコ類”;軟体動物門;頭足網)は、石灰性外甲的な貝殻を持つ軟体動物(有殻亜門 = Conchifera)に分類されているが、その長い進化史を通して貝殻を退化させている。貝殻を失うそのメリットは、軽くて柔軟な体や俊敏な動きの獲得による生存能力の向上だとされるが、その理由は定かではない。また、軟体の体には分類に使える形質が限られているが為に、形態学的解析に基づく系統分類が困難である。一方、遺伝子など生体高分子を用いる分子進化系統学的研究も、ごく最近になるまでは非常に稀だった。そこで私は今回、自身が行っている、⑴タコ類のミトコンドリア系統ゲノム解析や、⑵貝殻形成に関わる遺伝子の比較ゲノム解析の現段階までの結果を紹介する。まず私は、別の研究プロジェクトで解析した21種のタコ類のトランスクリプトームデータから、ミトコンドリアゲノム(ミトゲノム)配列データを抽出した。公開されたタコ類や、イカ類と腹足類など外群のもののミトゲノムデータもそれに加えて、系統解析や分岐年代推定を行った。その結果、タコ類がP/T境界(約125 MYA)あたりに貝殻を失くしたことや、現生タコ類は白亜紀に多様化したことなどが解かった。この結果を用いて私は、タコ類の重要な多様化イベントと地史的イベントとの関連性について考察した。次いで私は、タコ類や頭足類の石灰性外甲的な貝殻の喪失に至るまでの進化プロセスを解明する目的で行った比較ゲノム解析について話す。まず私たちは、ベーザルな頭足類で石灰性外甲的な貝殻を持っている現生オウムガイや、二次的に貝殻を再獲得したタコ類のカイダコの貝殻マトリックスタンパク質(SMP)のプロテオーム解析やトランスクリプトーム解析を行った。得られた結果から、オウムガイには有殻亜門のSMPが保存されていることや、マダコやカイダコにもSMPが保存されていることが解った。これらのことから、タコ類における貝殻の喪失には転写調節因子の進化が関与しているのだと考察できたが、今後、機能解析や全ゲノム解析も含む追加研究が必要である。
連絡先 熊澤 慶伯(内線5844)
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備考 本セミナーは第55回生物多様性研究センターセミナーを兼ねています。