概要 |
39年前、名古屋大学の岡崎恒子教授の研究室で大学院生として研究をスタートしたとき、研究室ではちょうど大腸菌のDNA複製から哺乳類のシステムへと研究を移行し始めたばかりでした。真核生物でのDNA複製の研究は、細胞分裂を通じて導入DNA分子を安定に分配するためセントロメア機能と組み合わせることが望ましいと考えられていました。そこで、私はヒトのセントロメアの研究を開始しました。 13年後、私たちはクローン化したヒトセントロメア由来の反復DNA(α-サテライトDNA)をヒト線維肉腫細胞HT1080へ導入して、導入DNA上にセントロメア機能を獲得したヒト人工染色体(HAC)を作製することに成功しました。その後、人工合成反復DNAからのHAC作製にも成功しました。それ以来、セントロメアのエピジェネティックなマークであるCENP-Aクロマチン(ヒストンH3バリアント)がどのように導入DNA上に集合し、維持されるのか? また、ヘテロクロマチンはこれとどう関わるのかについての研究を続けて参りました。本セミナーでは、セントロメアにまつわる不思議なエピソードも交えながら私たちの「山あり谷あり」の研究について紹介する予定です。 |