概要 |
どうして風邪を引くと熱が出るのだろうか? 風邪をひくと体が熱を作り出して原因となるウィルスを退治するのだと考えられている。そんな時に体を作る細胞が自身を守るためにする反応が熱ショック応答である。熱ショック応答の一番重要な役割は細胞を構成するタンパク質を熱変性から守ることである。そのためにシャペロンと呼ばれるタンパク質を作り、シャペロンの作用によって変性したタンパク質を元の形に戻す。熱ショック応答は正常細胞だけでなく、がん細胞など急激に成長する細胞にも必要だが、その翻訳レベルの発現制御は謎のままである。ここでは、翻訳開始因子eIF3がmRNAの特異的な配列に依存して、熱応答に必要なタンパク質の翻訳を活性化することを新たに見出したので報告する。eIF3は13のサブユニットからなる巨大翻訳開始因子である。そのiサブユニットの酵母温度感受性変異体を用いてゲノムワイドの翻訳プロファイリングを行ったところ、eIF3iがRNA結合パートナーであるeIF3gとともに熱に応答して一群のmRNAの翻訳を促進することが明らかになった。eIF3i/gが制御する遺伝子には、シャペロンHsp70をコードするSSA1/2が含まれる。その翻訳制御は開始コドンの10塩基下流に位置するGUCGモチーフにeIF3gが直接結合することで行われる。様々なモデル細胞を使い、同じ作用が癌細胞でも起こりその悪性化を亢進する可能性も示唆されたので報告する。 |